派遣労働者の同一労働同一賃金 待遇等の向上向けて派遣先にも責務強化
これまで派遣労働における同一労働同一賃金への対応を見てきましたが、労働者派遣法では派遣会社はもとより、派遣先企業についても守るべき事項を定めています。派遣労働者の待遇向上に向けて、派遣労働を活用する派遣先企業側に求められる責務について確認しておくことにしましょう。
同一労働同一賃金への対応として、派遣先企業に課せられる義務には大きく分けて4つあります。
待遇に関する情報等の派遣会社への提供
待遇決定方式に応じて、待遇に関する情報を派遣会社に提供しなければなりません。「派遣先均等・均衡方式」では、比較対象労働者の職務内容や選定理由、待遇等(賃金のみならず教育訓練・福利厚生等を含む)に関する情報を提供する必要があります。
一方、「労使協定方式」では、同種業務に従事する従業員に実施する業務遂行に必要な能力付与のための教育訓練や、給食施設、休憩室・更衣室の利用に関する情報を提供する必要があります。情報提供は口頭ではなく、書面の交付やFAX、メールなどによって行い、その写しを派遣終了日から3年間保存しなければなりません。また、派遣先企業は派遣会社の求めに応じて、派遣先労働者に関する情報や派遣労働者の業務遂行の状況等の情報提供について配慮義務が課されています。
派遣料金交渉における配慮義務
労働派遣契約締結時はもとより、派遣先均等・均衡方式において派遣先企業で賃金改定が行われたり、労使協定方式において「一般賃金」が改定されたりすると、派遣先企業は派遣会社から派遣料金の改定交渉を受けることが考えられます。
その際、派遣労働者の待遇改善が行われるよう配慮する義務があります。なお、派遣会社からの交渉に一切応じないといった対応は、行政指導の対象になる可能性があります。
必要な教育訓練の実施
教育訓練は、本来、雇用主である派遣会社が実施すべきですが、派遣先の業務に密接に関連した、専門性の高い教育訓練などについては、派遣先で行われることが適当であると考えられます。
このため、派遣会社から要請があれば、業務に必要な能力開発のための教育訓練を自社の従業員に行う場合、派遣社員にも実施するなど、必要な措置を講じなければなりません。
福利厚生利用の機会付与
給食施設、休憩室、更衣室の3つは、業務を円滑に進める上で重要な施設であるため、派遣社員にも利用機会を与えなければならないと義務づけられています。
また、派遣先企業が運営する、物品販売所、病院、診療所、保育所、図書館、娯楽室、運動場、体育館、保養施設など、派遣先企業の従業員が通常利用している施設について派遣社員が利用できるよう配慮しなければなりません。
その他
労働者派遣契約や派遣先管理台帳等の記載内容について、派遣労働者が従事する業務に伴う責任の程度、派遣労働者が労使協定方式の対象者であるか否かに関する事項が追加されています。