実務相談 ハローワークの処分に納得がいかない場合の不服申立てはできますか?
Q:雇用保険の不服申立はどのように行うのか?
先頃、会社を退職した知人のことで相談いたします。その知人は退職後、ハローワークに離職票を提出し、雇用保険の受給資格の決定を求めました。その際、離職理由は自己都合ではなく上司のパワハラによる会社都合である旨を伝えましたが、離職理由は変更されませんでした。 本人はこの処分に不満なようで、こうした場合に審査請求ができると聞いたことがあります。どのような制度なのでしょうか?
A:都道府県労働局に配置された雇用保険審査官に対して口頭または文書で審査請求
近年、職場環境が多様化するなか、離職理由を巡っても単純に「会社都合」「自己都合」といった判断の難しい状況が生じてきています。ご質問にあるようなハラスメントや人間関係のもつれなどのほか、過重労働や賃金未払い、人事異動・評価などの処遇に関わる問題など、会社側と従業員側で言い分が異なるケースも増えてきています。会社都合か、自己都合かの離職理由の違いは、失業給付(基本手当)の受給にも影響するだけに、ご本人にとっては大きい問題であると拝察いたします。
一般に行政庁の処分等に納得がいかない場合、行政不服審査法に基づいて不服申立てを行うことになりますが、雇用保険や労災保険に関しては、特別の法律として「労働保険審査官及び労働保険審査会法」が定められていますので、これに基づいて不服申立てを行うことになります。
今回、離職理由の変更を行わなかったハローワークの処分に不服があるということですから、都道府県労働局に配置された雇用保険審査官に対して審査請求を行うことができます。訴訟と違って費用はかかりません。審査請求の対象となるのは、被保険者資格の得喪の確認に関する処分、失業等給付に関する処分、不正受給に係る返還命令もしくは納付命令などであり、保険料の徴収に関する処分や雇用安定事業等に関する処分については、行政不服審査法に従って不服申立てをすることになります。
審査請求は、処分のあったことを知った日の翌日から起算して3月以内にしなければなりません。
審査請求は、処分を下したハローワークを管轄する都道府県労働局に配置された雇用保険審査官に対して文書または口頭で行いますが、処分をしたハローワークや居住地を管轄するハローワークを通じても行うことができます。
審査請求がなされると、雇用保険審査官により審理が行われ、審査請求の却下、審査請求の棄却、失業等給付に関する処分等の取消しのいずれかの決定がなされます。
さらに、この決定に不服なときは、労働保険審査会に再審査請求をすることができます。それでもまだ納得がいかないということであれば、裁判所に行政訴訟を提起するということになるでしょう。
なお、以前は再審査請求を経た後でなければ裁判所に訴えを提起できませんでしたが、平成28年4月に施行された改正行政不服審査法によって審査請求の決定後であれば訴えを提起できることになっています。