実務相談~労働者派遣法・派遣社員の採用前の面談は禁止?~
労働者派遣法では、派遣会社からの派遣社員と派遣先企業との事前面接が禁止されています。その理由について実務相談に寄せられた内容からみていきましょう
一時的な業務量増加への対応と育児休業の取得が見込まれる社員がいることから代替として、派遣社員の活用を考え、取引先会社から派遣会社を紹介してもらいました。その際、派遣社員の事前面接は禁止されていると派遣会社のコーディネーターから説明を受けました。 お互いを理解した上で業務を開始した方が、気持ちよく働けると思うのですが、何故、禁止されているのでしょうか。
労働者派遣の特殊性や保護の目的
派遣社員と派遣先企業と事前面談を禁止は労基法で定められており、労働者派遣の特殊性や該当労働者の保護を目的とされています。
労働者派遣法26条6項では「労働者派遣(紹介予定派遣を除く) の役務の提供を受けようとする者は、労働者派遣契約の締結に際し、当該労働者派遣契約に基づく労働者派遣に係る派遣労働者を特定することを目的とする行為をしないように努めなければならない」と定めています。
事前に面談することは派遣先企業が派遣労働者を特定すると考えられ、派遣先企業は指揮命令だけでなく、 派遣労働者との間に雇用関係が成立し職業安定法で原則禁止している労働者供給事業に該当する可能性が出てくるのです。
このような法規定があるのは、労働者派遣の特殊性に起因するものといえるでしょう。労働者派遣制度は、派遣会社が雇用主としての責任を負い、派遣先企業は指揮命令のみを行うという仕組みをとっており、派遣社員の働く能力については、雇用主である派遣会社が派遣先企業の求める職業能力を見極めて派遣を行うことが基本とされます。
また、派遣労働者の観点からも保護されることが必要とされます。例えば、容姿・年齢といった職業能力以外の要素に基づく差別的な選別が行われるおそれがあるとし、事前面接による派遣労働者の特定を禁止しているわけです。
しかし、すべての事前面接が禁止されているわけではありません。
労働者派遣法26条6 項にあるように、派遣先に直接雇用されることを前提に派遣される紹介予定派遣の場合や、派遣会社が派遣労働者を選定しその派遣先企業で仕事をすることがすでに決定している場合には事前打ち合わせなどを行うことは認められています。