実務相談〜行政通達で認められている労働時間・賃金の端数処理の方法は?〜
「行政通達で認められている労働時間、賃金の端数処理は? 」
今回は、実際に寄せられた実務相談をもとに、時間外労働時間や賃金に関する端数処理についてみていきましょう。
“先月、営業職から経理部門に異動になりました。これまでまったく馴染みのなかった部署であるため戸惑うことが多く、先日も給料計算に際して端数処理で頭を抱えてしまいました。行政通達で認められている端数処理があるということですが、ご教示願います。”
行政通達で認められている端数処理
常に労働者の不利となるものではなく、事務簡便を目的としたものとして、行政通達(昭和63年3月14日基発第150号)では、以下の時間外労働時間や賃金に関する端数処理を認めています。
①時間外労働時間(残業時間)の端数処理
1日ごとの労働時間は「1分単位」でカウントします。
ただし、1カ月の時間外労働、休日労働、深夜労働の各々の合計時間について、1時間未満の端数がある場合、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げることが認められます(この端数処理は 1日単位などで行うことはできません)。
②時間外手当 (割増賃金・残業代)の端数処理
1時間当たりの賃金額・割増賃金額に、1円未満の端数が生じた場合には、50銭未満(0.5円未満)の端数を切り捨て、50銭以上1円未満の端数を1円に切り上げる端数処理は認められています。
③1カ月当たりの割増賃金額の端数処理
1ヵ月間における割増賃金の総額に、1円未満の端数が生じた場合には、上記(1時間あたりの割増賃金)と同様に、50銭未満(0.5円未満)の端数を切り捨て、50銭以上1円未満の端数を1円に切り上げるものとして端数を処理することが認められています。
④賃金(給料・給与)の端数処理
1カ月の賃金額に100円未満の端数が生じた場合には、50円未満の端数を切り捨て、50円以上の端数を100円に切り上げる端数処理は認められます。
また、1カ月の賃金額に1,000円未満の端数がある場合は、その端数を翌月の賃金支払日に繰り越して支払うことも認められます。
ただし、1カ月の賃金支払額における端数処理、および翌月への繰り越しは、就業規則において、その旨を定める必要があります。
社労用語「裁量労働制」
裁量労働制は、勤務時間や業務の時間配分などを働く個人の裁量に任せる働き方です。
あらかじめ設定した「みなし労働時制」に対して、実際の労働時間が長かったり、短かったりしても、みなし労働時間分を働いたものとしてみなされます。
裁量労働制には、指揮命令下での業務遂行が困難とされる、高度な専門性を要する19種に限定された「専門業務型裁量労働制」と、経営企画、人事・労務、財務・経理等の部署における企画・立案・調査・分析といった業務を対象とした「企画業務型裁量労働制」の2つがあります。
この2つの制度には、対象業務の違いに加え、導入手続などにも大きな違いがあります。