派遣労働者を雇う際に必ず知っておきたい「労使協定方式」とは?
今回は、働き方改革による派遣労働者の同一労働同一賃金に向けた「労使協定方式」について詳しくみていきましょう。
労使協定方式とは?
労使協定方式では、対象派遣労働者の賃金(基本給、 手当、賞与(特別給与)、退職金が含まれます)は、 ①従事する業務について「一般賃金」と同等以上になること、②派遣労働者の能力、経験等に向上があった場合、 職務に密接に関連する賃金(通勤手当等を除く)が改善されること、の二つの基準を満たす必要があります。
一般賃金とは、同種の地域、同種の業務、 同程度の能力・経験の3つの要素を加味した 一般労働者の賃金を指し、その具体的な金額は毎年6~7月に発出される厚労省職業安定局長通達で示されます(適用は翌年4月から)。
例えば、そこで示された一般事務職の一般賃金(基本給・賞与等)が時給1,047円であれば、 派遣会社はそれ以上の額で対象派遣労働者と労使協定を結ばなければなりません。
通達で示される「一般賃金」
一般賃金には全ての賃金が含まれますが、職業安定局長通達ではこのうち通勤手当と退職金についてはそれ以外の賃金と分離して示されており、A:基本給・賞与・手当等、B:通勤手当、C:退職金のそれぞれの区分で比較し、同等以上となっているかどうか確認することができるようになっています。
A(基本給・賞与・手当等)
賃金構造基本統計調査に基づく「職種別の基準値」の額、または職業安定業務統計に基づく額の2種類の基準値(どちらを選ぶかは労使で決定します)に、「能力・経験調整指数」によって調整した額が示されます(例えば、ソフトウェア作成者の場合、基準値(0年):1,303円、1年:1,489円、2年:1,614 円、3年:1,678円など)。
さらに、この額に派遣先事業所または就業場所の物価等を反映するための「地域指数」を乗じて算出した額がAの一般賃金額となります。
実務的には、派遣労働では契約により特定業務に従事することが多いことから、職務給との親和性が高いと考えられます。ですから、派遣労働者が従事する業務の種類、難易度等による職務ランクを定め、能力・経験などが向上した場合に賃金が改善するように賃金テーブルを設定するといった方法が考えられます。
B(通勤手当)
実費負担と固定額という二つの決め方があります。
固定額での支給の場合には、通勤手当に関する統計により、厚労省で定めた時給換算で71円(令和4年度適用)以上を支払う必要があります。
C(退職金)
①退職手当制度を設ける、②一般基本給・賞与等に退職金給付等の費用の割合として6%を乗じた額を前払い退職金として支払う、③中小企業退職金共済制度に加入する、の3つの方法から労使で選択して決定し、一般賃金と比較することになります。
同等以上の賃金であるかを比較する
なお、一般賃金と対象派遣労働者との賃金の比較に際しては、A、B、C ごとに行うことはもとより、全部または一部を合算して比較することも認められています。
また、厚労省は対象派遣労働者の賃金が一般賃金額を上回っている場合、それを理由に、賃金を引き下げることは、改正法の目的に照らして問題であるとしています。