働き方改革について~雇用保険の改正や労災認定基準の追加~
雇用保険マルチジョブホルダー制度を導入
雇用保険マルチジョブホルダー制度とは、複数の事業所で勤務する65歳以上の労働者が一定の要件を満たす場合、本人がハローワークに申し出ることで特例的に雇用保険の被保険者(マルチ高年齢被保険者)になることができるというもので、2022年1月から導入されました。
雇用保険マルチジョブホルダー制度の被保険者の要件は、下記となります。
- 複数の事業所に雇用される65歳以上の労働者であること。
- 2つの事業所(1つの事業所における週所定労働時間が5時間以上20時間未満) の労働時間を合計して週所定労働時間が20時間以上であること。
- 2つの事業所のそれぞれの雇用見込みが31日以上であること。
マルチ高年齢被保険者が失業した場合、要件を満たせば、高年齢求職者給付金が受給できます。給付額の算定には複数の事業所の賃金は算定されませんが、どちらか1つの事業所を離職した場合でも受給は可能です。
その他、失業給付のほか、育児 休業給付、介護休業給付教育訓練給付も支給対象となっています。
この申し出は本人が行うことになりますが、雇用の事実や所定労働時間など手続きに必要な証明などは事業主が行う必要があり、事業主はこの制度への申出を行ったことを理由とする、解雇や雇止め、労働条件の不利益変更といった不利益な取扱いは禁じられています。
なお、注意すべきこととして、被保険者資格取得の日から保険料納付の義務が生じ、任意脱退はできないことを覚えておくと良いでしょう。
脳・心臓疾患の労災認定基準が改正について
厚労省は2021年9月に20年ぶりとなる「脳・心臓疾患の労災認定基準」を改正や評価の対象を追加しました。
これまでの「長期間の過重業務」「短期間の過重業務」「異常な出来事」で業務の過重性を評価することに変わりはありませんが、改正のポイントは以下となります。
【長期間の過重業務の評価の改正】
・改正前は、発症前1か月に100時間または発症前2か月間~6か月間平均で、月80時間を超える時間外労 働が認められる場合、発症との関係が強いと評価します。
・改正後:改正前の基準を維持し、その基準に近い時間外があった場合には、一定の「労働時間以外の負荷要因」と合わせて総合評価をすることを明確化します。
【労働時間以外の負荷要因の評価の追加】
・勤務時間の不規則性では休日のない連続勤務、勤務間インターバルが短い勤務等の評価を追加します。
・事業場外における移動を伴う業務では、心理的負荷を伴う業務や身体的負荷を伴う業務を評価として追加します。
【短期間の過重業務と異常な出来事】
・それぞれ業務と発症との関連性が強いと判断できる場合を明確化します。
・「心停止(心臓性突然死を 含む)」に含めていた心不全症状については、心停止とは異なるため、新たな対象疾病として「重篤な心不全」として追加します。