派遣先均等・均衡方式による合理性判断はどうする?〜派遣労働者に待遇差がある場合〜
前回、派遣先均等・均衡方式では、派遣先の通常の労働者が比較対象となることから、その人選基準や比較対象労働者の情報提供等についてみてきました。
では、派遣労働者と比較対象労働者とで実際に待遇差がある場合、その合理・不合理の判断をどのように行うのか、具体例を挙げて検討してみましょう。
全待遇の均等・均衡を合理性判断は3要素で
派遣先均等・均衡方式では、すべての待遇(手当、福利厚生、教育訓練、安全管理、賞与、基本給等)について、均等・均衡を図る必要があります。
派遣労働者と派遣先の比較対象労働者とを比較して、職務の内容が同じで、職務の内容・配置の変更の範囲も同じであれば「均等待遇」、違いがあれば「均衡待遇」が求められることになります。
「均等待遇」は考え方としてはシンプルですが、「均衡待遇」は禁止する不合理な待遇差であるか否かを判断する必要があります。
基本的には有期・パート社員の場合と同様、個々の待遇ごとに「職務の内容」、「職務の内容・配置の変更の範囲」、「その他の事情」の3要素のうち、当該待遇の「性質・目的」に照らして適切と認められるものを考慮して判断します。
具体例を用いた合理性判断の捉え方
以下では、紙幅の関係上、皆勤手当と賞与の2例についてみていくことにします。
[同じ運転業務に就く比較対象労働者には皆勤手当が支給され、派遣労働者には支給されない場合]
皆勤手当の「性質・目的」が、出勤運転者の一定数の確保を目的としたものであるとすれば、「業務の内容」が支給・不支給に影響すると考えられます。
他に考慮する「その他の事情」がない場合、派遣労働者に手当を支給しないことを不合理ではないと説明し、納得が得られるかを考えます。目的が出勤運転者の確保であるならば、やはり「業務の内容」が同じ派遣労働者にも支給する必要があると言えそうです。
なお、ガイドラインでは、派遣先の通常の労働者に対し、欠勤にはマイナス査定を行う一方、一定数以上の出勤には精皆勤手当を支給している場合、派遣労働者にマイナス査定を行わないのであれば、その見合いの範囲内で精皆勤手当を支給しないことは問題ないとしています。
[販売業務の比較対象労働者には功労報償として賞与が支給され、同じ業務に就く派遣労働者には支給されない場合]
賞与の「性質・目的」が、業績に対する功労報償であり、支給基準が販売実績の場合、「業務の内容」や販売実績が「その他の事情」として支給・不支給に影響すると考えられます。
このケースで、「業務の内容」が同じで販売実績のある派遣労働者に賞与を支給しないことを不合理でないと説明し、納得が得られるかを考えます。目的が功労報償であるならば、「業務の内容」が同じ派遣労働者にも販売実績に見合った賞与を支給する必要があると言えそうです。
なお、手当・賞与の不支給の理由を、「派遣労働者だから」「将来の役割期待が異なるから」などの主観的・抽象的な説明では、不十分とされていることに留意する必要があります。