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判例〜感染症の不告知による内定取消しは違法〜

    
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判例〜感染症の不告知による内定取消しは違法〜

本件は、エイズウイルス(HIV)感染を告げなかったことを理由に、病院での社会福祉士としての採用内定を取り消されたX(30代男性)が、内定取消の違法性と、同病院による医療情報の目的外利用によるプライバシー侵害を主張して、病院を運営する社会福祉法人に慰謝料などの支払いを求めた事件です。

札幌地裁はXの主張を認め、法人に対して約165万円の支払いを命じました。 

【社会福祉法人H教会事件 札幌地方裁判所(令和元・9・17判決)】

面接時の持病に関する不告知を理由に内定を取消し

平成29年12月、HIVに感染しているXは、社会福祉法人が経営する病院の社会福祉士の求人に応募しました。Xは採用面接で持病の有無について聞かれたものの、HIVの感染について告げることなく、病院は同年12月末に翌年2月採用の内定通知を交付しました。 

その後、病院の総務課職員がXの同意を得ずに、Xの過去の受診記録からHIV感染の記載を見つけたことから、平成30年1月中旬に改めて電話でXに持病の質問をすると、XがHIV感染の事実を否定したことから、HIVに感染していないことを証明する書類の提出を求めました。 

このため、Xは主治医が作成した、病名にHIV感染症と記載された診断書を病院側に提出しましたが、そこには、抗ウイルス薬の内服で、ウイルス量は検出感度以下で免疫機能も良好に維持されており、就労に問題はなく、また、業務上、職場の他者への感染も心配ない旨が記載されていました。 

しかし、病院側はXに対し、面接時における健康状態、服薬の有無、電話での再度の持病に関する質問に対して正確に回答しなかったとして、採用内定の取消通知書を送付しました。

医療情報の目的外利用はプライバシー侵害に当たる

これに対しXは、内定取消しは違法であり、病院が保有していたXに関する医療情報を目的外利用したことはプライバシーの侵害に当たるとして、不法行為に基づく損害賠償等を求めて提訴しました。

判決では、HIV感染事実の告知義務について、HIV感染者への社会的偏見や差別は根強く、感染の情報は極めて秘密性が高く、その取扱いには極めて慎重な配慮が必要であること、また、HIVは性行為を除く日常生活によっては感染せず、Xの場合も主治医が就労に問題はなく、職場での他者への感染の心配はないとの所見を示しており、Xが病院に対して、HIV感染の事実を告げる義務はないとしました。

よって、Xの不告知による内定取消しは客観的に合理的な理由が存在し、社会通念上相当と是認できる場合に当たるということはできず、違法としました。 

また、プライバシー侵害による不法行為の成否については、病院がXの同意を得ず、診療など健康管理に必要な範囲を超えてXの医療情報を採用活動に利用したことは、個人情報であるXの医療情報の目的外利用として個人情報保護法16条1項に違反する違法行為であり、これによりXのプライバシーが侵害されたとして不法行為を構成すると判示しています。

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