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判例〜基準を下回る残業時間でも業務起因性が認められて労災認定〜

    
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判例〜基準を下回る残業時間でも業務起因性が認められて労災認定〜

本件は、養殖業者に魚薬を販売する営業社員が出勤後、営業車内において心不全で死亡し、その遺族が労基署の労災保険給付 (遺族補償給付等)の不支給決定処分を不服として提起したものです。

本審では、取引先との業務における肉体的、精神的負荷等が大きかったとし、業務起因性が認められて不支給決定処分が取り消されました。 

U労基署長事件 福岡地方裁判所(令元・6・14判決) 

過重業務の有無が判断要素になる

本裁判の争点は、死亡した営業社員(当時47歳)の心不全が業務に起因するものといえるかどうかです。 

労災の認定基準では、脳・心臓疾患の発症に影響を及ぼす過重労働について、短期間と長期間での過重業務の有無をその判断要素にしています。

当該営業社員の発症前1週間の時間外労働は27時間52分で、他の時期と比較して特に過度の長時間労働とは言えず、発症5日前には休日も確保されており継続した長時間労働があったとは認められないとしました。

また、発症前6カ月の時間外労働については、1カ月当たり70時間前後であり、過労死ラインといわれる80時間には満たないものの、相当な長時間労働が継続していたと認定しています。

業務に関しては、発症直前の取引先における消毒作業は、営業職にとっては厳しい作業環境であり、平素より精神的緊張が大きい面があったものの、これまでも月に数回は消毒作業に立ち会っていたことからすれば、精神的緊張が著しいものとまでは認め難いとされました。

長期的な精神的負荷は大きい

しかし、長期的には当該営業社員の精神的緊張は例年に比して相当大きくなっていたと認定されました。

同取引先は当該営業社員にとって売上の大部分を占める重要な取引先であり、自らの営業成績ばかりか営業所全体の売上にも大きな影響を与えかねない状況となっていました。

加えて、同取引先の社長は、むら気が多く、取引業者などに理不尽とも思える叱責をしたり、出入り禁止を告げて取引量を大幅に減らしたりすることがありました。

実際、心不全を発症した前年には競合他社の担当者が出入り禁止となり、これに伴って当該営業社員の業務負担は増加したものの、営業所長は営業員の増員を認めませんでした。

業務起因性が認められる

本判決では、短期間の過重業務は認められないものの、発症前6カ月間の月平均の時間外労働時間が70時間15分で、肉体的・精神的負荷の大きい業務を長期間にわたり継続していたとして、過労死ラインの80時間に満たないもののその過重性を認定。

「明らかに業務以外の原因により発症した等の特段の事情のない限り、業務起因性を認めるのが相当である」と判示しました。

なお、業務以外の要因として、当該営業社員は1日20本の喫煙を30年続けており、医師からは脂質異常症の指摘もされるなど、動脈硬化につながる事情がありましたが、業務起因性を否定することはできないとされました。

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