【同一労働同一賃金】合理性のある適切な「手当」の判断はどうする?
パート・有期労働法8条における均衡待遇では、①職務の内容、②職務の内容・配置の変更の範囲、③その他の事情が考慮要素となり、その原則的な考え方として 「ガイドライン」が示されていることを紹介しました。
今回はさまざまな待遇の中から「手当」について考えてみることにします。
適切な待遇の考慮要素となる「手当」
正社員と非正規社員との待遇差については、個別の待遇ごとにその性質・目的に照らし、適切な考慮要素に基づいてその合理・不合理性が判断されることになります。
もちろん、その最終的な判断は裁判所に委ねられますが、企業としては、法律はもとよりガイドライン、通達、裁判例などを総合的に勘案して対応していく必要があります。
一口に「手当」といっても、業種・業界、個別企業ごとにさまざまなものがありますが、不合理な待遇差の解消を考える場合、企業が支給するすべての手当がその対象となります。
「手当」は個別に検討するべき
その基本的な考え方は次の通りです。
まず、手当は個別に一つずつ検討します。
支給額全体で正社員と非正規社員とが同じくらいだから問題はないと一括りで判断しないことです。
そして、仮に正社員には支給しているが、非正規社員には支給していない手当(手当の額に差がある場合も含めて)があれば、当該手当の趣旨・目的に照らして支給しないことに合理性があるかどうかを検討することになります。
「精皆勤手当」の場合は
ここでは一例として、一定期間、欠勤がないことを条件に支給される「精皆勤手当」を考えてみましょう。
ガイドラインでは「通常の労働者と業務の内容が同一の短時間・有期雇用労働者には、通常の労働者と同一の精皆勤手当を支給しなければならない」とあります。
要するに、皆勤を奨励するという精皆勤手当の趣旨・目的を考えれば、正社員と非正規社員とで待遇差を設けることに合理性はないということです。
「手当」にまつわる最高裁判決の判示例
最高裁判決でも同様の判示があります。
ハマキョウレックス事件での「皆勤手当」、長澤運輸事件での「精勤手当」について、いずれも当該手当の趣旨・目的に照らして、正社員に支給し、非正規社員に支給しないのは不合理であると判断しています。
手当に関しては、ガイドラインにおいて、役職手当、特殊作業手当、特殊勤務手当など代表的な10の手当について考え方が示されているので参考にしてください。
また、昨年10月15日の日本郵便事件の最高裁判決では、ガイドラインにはない住宅手当、扶養手当などについて判示がありました。
住宅手当については、異動に伴う住宅費の負担軽減を目的としたもので、異動の有無という労働条件に差がない場合は支給すべきとし、扶養手当については、契約社員についても、扶養親族があり、かつ、相応に継続的な勤務が見込まれるのであれば支給すべきとしています。
ただし、これら最高裁判決もあくまで個別企業の手当に関する判断であり、同じ名称の手当だからといって合理・不合理の判断も必ずしも同じというわけではないことに注意する必要があります。