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判例「配慮を欠いた配転内示は違法」~慰謝料請求を認めた一審判断を取消し~

    
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判例「配慮を欠いた配転内示は違法」~慰謝料請求を認めた一審判断を取消し~

A財団が業績悪化を理由に実施した構造改革として、
① 総務担当の女性職員らを営業担当として転居を伴う配転命令の内示をしたこと
② 休職していた管理職の復職に際して、従前の地位に戻せるかを見極めるために降格・減給したこと
などが人事権の濫用に当たるとして、職員らが不法行為に基づく損害賠償として慰謝料等を求めた裁判です。【A財団事件 東京高等裁判所(平31・3・14判決)】

転居を伴う配転命令が人事権の濫用等に当たるか

本件は、論点が多岐に亘ることから、転居を伴う配転命令が人事権の濫用等に当たるかどうかの判断をみていくことにします。

配転の対象となった女性職員らは、いずれも期間の定めのない労働契約を締結している、 いわゆる正職員です。

就業規則では

A財団の就業規則では「職員に対し業務上の必要性により、転勤または職種変更を命じることがある。職員は、正当な理由がない限りこれを拒むことができない」 と定められており、さらに「財団は、前項の命令を発する場合、原則として命令の2週間前までに通知する。ただし、業務上やむを得ない場合、通知期間を短縮したり、事前通知を行わない場合もある」と定められていました。

異動命令の前例はなし

しかしながら、A財団においてはこれまで女性職員に転居を伴う配転命令がなされたこ とはなく、今回の女性職員らもそのような広域での異動経験はありませんでした。

業務上の必要性がなければ権利濫用とされる

配転命令に関するその適法性の判断枠組みは、東亜ペイント事件 (最二小判昭61・7・14) において確立されているといえます。

権利濫用が成立するのは、
・当該転勤命令の業務上の必要性が存しない場合
・業務上の必要性が存するが、他の不当な動機・目的をもってなされたものである場合
・労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせる場合
など、特段の事情の存在が要求されます。

さらに、業務上の必要性は、余人をもって代え難いという高度の必要性までは要しないとされています。

一審では「人事権の濫用」と判断

一審(東京地判平30・2・26) は、 配転の目的である、環境を変えて能力向上等を図るということについて業務上の必要性を認めましたが、家族の介護など、個々の事情への配慮や丁寧な説明がなく、相当性を著しく欠いていると指摘。
「(女性職員ら)に予期せぬ大きな負担を負わせ、······通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであり人事権の濫用に当たる」として違法と判断、慰謝料など女性職員ら4人に110万円ずつ支払うよう命じました。

控訴審では慰謝料支払いを取り消し

その後、配転命令は撤回され、控訴審では内示の違法性が焦点となりました。
東京高裁は、配置転換の内示は事前の告知であり、その後に異動計画が撤回ないし変更される余地を残しているとしました。
仮に、女性職員らが本件配転内示後に転勤を拒むことのできる正当な理由を示して人事部、所属長等に相談すれば、転勤について配慮が検討された可能性を否定できないことから、一審の慰謝料支払いを取り消しました。

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