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判例~転職勧誘を理由とする懲戒解雇の有効性~

    
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判例~転職勧誘を理由とする懲戒解雇の有効性~

会社の従業員らを引き連れて同業他社に転職しようとした、不動産販売会社の本部長Aおよび店長Bに対する懲戒解雇処分の有効性が争われた事案です。Aらは、処分は無効であるとして、地位確認と未払賃金、慰謝料等を請求しましたが、 大阪地裁は社会的相当性を逸脱した引き抜き行為であるとして、解雇の合理性・相当性を認めました。 【 F 不動産 販売事件  大阪地方裁判所 (令2・8・6判決) 】

その判例とはどういった内容でしょうか。

同業他社への引き抜き行為 幹部社員の誠実義務違反を認定

不動産販売会社に勤務していたAとBは、平成10年と14年にそれぞれ採用され、その後、Aは県全体を統括する本部長、Bは店長の役職に就いていました。平成29年6月頃、Aは同業他社に転職することをBに伝えて転職を勧誘、さらにAとBは他の有望な営業・事務職員にも同社を退職してAと事業を行うことを勧誘しました。同年8月末、Aは同年12月に退職する旨の退職届を提出していましたが、この転職勧誘行為等が内部通報で発覚し、会社は就業規則に基づき、AとBを懲戒解雇としました。 

大阪地裁は、本件について、以下の通りとしています。

  1. 会社において本部長および店長という重要な地位にありながら、同業他社のために転職勧誘を繰り返したこと。
  2. 転職勧誘に際して、労働条件の上乗せや300万円もの支度金の提示をしていること。
  3. 転職勧誘を受けたBは、同社店舗に近接した転職先店長に就いており、その店舗探しもAが在職中に行っていたこと。
  4. 勧誘行為が内部通報で発覚しなければ、営業成績優秀な相当数の従業員が転職した可能性があり、会社への影響は大きかったと推測されること。

以上を認め、懲戒事由該当性を判断しました。

A及びBの行為は、単なる転職の勧誘にとどまるものではなく、一般的にやむを得ない事情もなく、法律で守られている利益を侵害すると同様な行動をしており、またAとBがは退職を予定していたことから今回の「懲戒解雇は客観的に合理的な理由があり、相当性と認められる」と判示しています。

職業選択の自由からみた「転職勧誘」とは?

転職勧誘については、憲法22条で保障された「職業選択の自由」に原則的に基づき適法と考えられています。しかし、同僚等に対する転職勧誘が違法とされた判決もあり「引き抜きをした企業側と元営業本部長に対する不法行為による損害賠償請求が認容された事例として、ラクソン等事件(東京地判平3・2・1 25)という判例があります。

この事件では、従業員の転職の自由は最大限に保障されなければとしながらも、その引抜きが「単なる転職の勧誘の域を超え、社会的相当性を逸脱し、極めて背信的な方法で行われた場合には、それを実行した会社の幹部従業員は、雇用契約の誠実義務に違反したものとして、債務不履行あるいは不法行為責任を負う」と判示しています。

同業他社への転職勧誘行為に対しては、懲戒解雇が当然であると考える事業主が多いように思いますが、裁判所の判断は容易にこれを認めていないことに留意する必要があります。 

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