現場の「焦り」が機能を作る。開発担当者が明かす、スマイルトラッキング「簡易登録機能」誕生の裏舞台

イベントや展示会、合同企業説明会を主催したことがある方なら、一度はあの血の気が引くような瞬間を経験したことがあるのではないでしょうか。

イベント開始直後、受付の前にみるみる膨れ上がっていく長蛇の列。事前登録を済ませてQRコードを握りしめている来場者の横で、「事前登録なしで、当日フラリとやってきた来場者」が受付スタッフに話しかけます。 「あ、登録してないねんけど、今から入れる?」

この「当日来場者」の処理をいかにスピーディーに捌くか。ここに、イベント全体の成敗を分ける「現場の泥臭い知恵」が隠されています。今回は、綺麗事のITシステムでは解決できない、イベント受付の大渋滞を回避するためのリアルな解決策をお届けします。


綺麗事のシステムが現場をパンクさせる。「焦り」から生まれた機能

多くのイベント管理システムには、当日その場で登録を行う「代理登録機能」が備わっています。受付スタッフが来場者の代わりに名前や連絡先を入力し、入場証を発行する機能です。

しかし、ここに大きな落とし穴があります。

通常のシステムでは、事前申込用と当日登録用の入力フォームが同じに設計されているケースが多いため、以下のようなすべての項目をその場で打ち込まなければならなくなります。

  • 氏名・フリガナ、住所・郵便番号、電話番号、メールアドレス
  • 会社名・部署・役職
  • 「現在の課題」や「保有資格」といった詳細な事前アンケート

「すべて入力しないとエラーになって登録ボタンが押せない」というシステムを前に、受付スタッフがキーボードを必死に叩いている間に、1分、2分と時間は無情に過ぎていきます。

実は、スマイルトラッキングの「簡易登録機能」は、まさにこの瞬間の「焦りと悲鳴」から生まれました。

戸惑う受付

イベントの現場。事前登録をせずに当日やってきた来場者は、早く中に入りたくてイライラした様子で受付の前に立っています。 それを見つめる受付スタッフの心臓は、焦りでバクバクと波打っています。

「早くシステムに入力して、QRコードを発行しなきゃ……!」 「でも、住所も、会社名も、メールアドレスも、全部必須項目だから飛ばせない……!」 「後ろの行列がどんどん伸びていく……早く、早くしないと……!」

この、目の前でイライラしているお客様と、それを見て『早く中に入れて差し上げたい!』と焦り、必死にキーボードを叩く受付スタッフの悲痛な声。 これこそが、私たちが何としても解決しなければならなかった「現場のリアル」だったのです。

データの整合性を保つための「綺麗事の仕様」は、現場の人間を追い詰め、お客様を怒らせる凶器になってしまう。だからこそ私たちは、必須項目を限界まで削ぎ落とし、究極の「現場ファースト」な裏口を作りました。


現場ファースト:必須なのは「名前のみ」。2秒で通す

スマイルトラッキングの簡易登録機能の思想は、きわめてシンプルです。 絶対に外せない『名前』だけをその場で打ち込んで、とりあえずQRコードを発行して中に入ってもらう。メールアドレスや会社名などの細かいデータは、後でゆっくり追記すればいいという、スピードを最優先した設計です。

実際の運用の流れは、以下のように劇的にスマートになります。

  1. 入力項目は「名前」のみ: 当日、事前登録なしで来られたお急ぎのお客様に対し、現場の受付スタッフが入力するのは「名前(氏名)」だけです。メールアドレスすら、その場で打ち込む必要はありません。
  2. 一瞬でQRコードを発行: スタッフが名前だけをパパッと打ち込むと、システムが「暫定情報(簡易登録状態)」としてその場ですぐにQRコードを発行します。お客様をお待たせすることなく、一瞬で会場内へお通しできます。
  3. 名刺をスマートに預かる: 「詳しい情報は後ほど登録しておきますね」と名刺だけをその場でスマートに預かります。
  4. イベント中にゆっくりデータ補完: 無事にお客様をお通しし、受付の混雑が解消してからイベントが終わるまでの間で、預かった名刺をもとにメールアドレスや会社名、役職などの詳細なデータを管理画面からゆっくり編集・追記します。

この「正式な登録フォーム」と「簡易登録フォーム」を完全に切り分けるというアプローチこそが、当日の受付混雑を劇的に解消する鍵となります。


現場スタッフの優しさに寄り添うシステム

システム開発の世界では、「最初から完璧なデータを正しく入力させるのが正しい設計だ」と思われがちです。

しかし、実際のイベント現場は生きています。ITリテラシーの異なる多様な人々が行き交い、誰もが「早く会場に入って目的のブースに行きたい」という期待や焦りを抱いています。そんな来場者の心理を無視したシステムは、どれだけ高機能であっても、ただ現場にストレスを与えるだけの存在になってしまいます。

スマイルトラッキングが多くのイベント主催者に選ばれ、大規模な現場でも愛用されている理由。それは、開発チームが前日設営から本番終了まで現場スタッフと一緒に汗を流し、「お急ぎのお客様は待ってくれない」という泥臭い現実を身をもって知っているからに他なりません。

美しいデータを作るために来場者をイライラさせるのではなく、まずはスムーズに会場に迎え入れる。イベントDXの第一歩は、そんな「受付2秒」の小さなおもてなしから始まります。

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